シナリオについて

プレイ人数:1人
プレイ時間:1~3時間
必須技能 :芸術系技能(50%以上)
探索者条件:あなたは破滅願望を持つ芸術家だった。
注意事項 :探索者は確定で継続不可または永久ロストとなる。

魔法遣いだったあなたへ。

神が7日間で創ったとされる世界は今、
7日後に滅びを迎えようとしている。
そう、魔女が言ったのだ。

PL向け事前情報

探索者選定については、条件である「破滅願望を持つ芸術家」に当てはまるのであれば新規継続を問わない。

破滅願望の程度や芸術に対する立場も自由であり、必ずしも芸術活動で生計を立てていなくてもよい。
ただし、このシナリオに参加した時点で探索者は確実に継続不可または永久ロストの結末を迎える点を留意すること。

また、シナリオ冒頭で『魔女』と呼称される存在に芸術的才能を見初められる場面が存在するため、少なくとも50%以上の「芸術家としての技能」を所持している必要がある。

探索者の準備はできましたか?

今後、シナリオを進行する際にいくつかの選択肢が出てくることがあります。

その際は上記のような水色の文字で選択肢が表示されるため、適切な選択肢をクリック or タップして、シナリオを進行してください。

 
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導入

 ひゅるるる、ぽつり。雨の鳴る。湿った地球の表面をさらったにおいのぞろぞろと、行列の、あなたのもとまで届く気配のする。
 あなたは今日も今日とて破滅を願う。
 さて、何に願っているのか。それは祈りか。叶えば何が破滅するのか。それはあなた自身にすら正確に答えられるものではないだろう。雨垂れのようにあなた自身の内側で沸々と抱かれている怒りにも似たその悲嘆は、あなただけのものではないのだ。
 だからかもしれない。あなたが声をかけられたのは。

 路地裏、本屋、何でもいい。何ならあなたのアトリエでもいいし、六畳半の狭い机の反対側でもいい。それは突如あなたの背後に立って、それからぬっくと声をかけてきた。

「お前、なんてうつくしい魂の炉にくべられているのかしら」

❚❘ 「魔女」との邂逅


 振り向けば、そこにはひとりの女性……およそあなたの知っている常識の範囲内であれば女性……がいた。
 足元をすっかり隠す長い裾のドレスが、蜘蛛の巣よりも軽やかにふわりふわりとうねっている。埃をかぶった童話の頁からそのまま引っ張り出してきたような目深にかぶられた三角帽子に、アンティークな囁きの似合う装飾品の数々。長い髪のほうがよっぽどさらさらとビロウドの衣擦れの音をこしらえて、彼女が首を傾げたことを告げている。
 魔女。……咄嗟にそんな非現実的な言葉が口蓋の裏をなぞるくらいに、美しいそのひとの佇まいは洗練されていた。

■「魔女」との対話


 もし気になることがあるのなら、魔女はいくつかの問いに答えてくれるだろう。その答えが、あなたの抱えた疑問の解決になるかどうかは別として。

・あなたは誰?

・どうやってここに現れた?

 

​あなたは誰?…………

「お前に私の名は必要ないよ。魔女。それだけで足りるだろう」

・どうやってここに現れた?

 

どうやってここに現れた?…………

「私は魔女だからね。魔法を使えばこの程度、驚くことでもないさ」
「あら、信じていない顔。お前、破滅なんて最大の理不尽を信じているくせに、その他一切の不条理は知らないままの顔をするのかい?」

・あなたは誰?

​・魔法とは……

 

魔法とは…………

「お前は魔法遣いになる素質があるよ」
「魔法というものが何かって? そうだね。私の誘いに乗ってくれたら、いつか手すきの時にでも話してあげる」

・誘いとは、何だ

 

誘いとは、何だ…………

「お前、表現をするのにおよそ相当な才能か努力とで鍛え上げてきただろう。そいつを使って、お前自身を芸術作品にしてみない?」
「芸術というのは、決して正しくは共有できない五感を共振させて魂を燃やすことを言うのだと聞いた。私は生憎その反対の性質に生まれついているために、芸術というものが何なのか、理解できないのだ。世界が滅亡する前に、ひとつ芸術というものを私も理解できるのか、試そうと思ってね」
「どうせ破滅を願っているのだろう。悪い話じゃあ、ないと思うのだけれど」

・世界の滅亡……

 

世界の滅亡…………

「そうだ。この世界は滅亡を迎える。今から7日後に」
「なぜ、とか、どうして知っている、とか、そういう疑問は捨てるがいいさ。ひとつ挙げれば際限なく溢れていって、7日間を使い潰してしまうだろうから」

・それで、何をすればいい?

・なぜ自分を選んだ?

 

それで、何をすればいい?…………

「お前の破滅願望を炉の熱に、お前から人間としての一切合切を削いでいく。削いで、削いで、削いで、最後まで残ったものは、きっとお前が持つ真実の芸術だ。私が魔法で手助けをするから、お前がお前自身を破壊して、世界の終わる最期の瞬間にどんな芸術を創るのか見せておくれ」

​・なぜ自分を選んだ?

​・この活動に意味はあるのか?

 

なぜ自分を選んだ?…………

「何って、そうさね。お前を誘いにきたんだ。お前は私好みのうつくしい魂の炉をこさえているからねえ」
「魂の炉が、何かって? 自分の顎でもこめかみでもはらわたでも、好きなところを指さしてご覧。ものの終わりと破壊を臨むときにいっとう吐き気を催すその場所に、お前の魂の炉があるよ」
「つまりは、破滅を願って人間であることを持て余している精神的な内臓さ。その熱と、お前自身の持つ技術とを見込んで、私はお前のもとまで来た」

​・それで、何をすればいい?

 

この活動に意味はあるのか?…………

「莫大な富も名誉の頂点も、何も与えられるものはない。そも、7日後にはお前もお前の尺度をつくるものもすべて滅びる。だから、ここにはメリットも報酬もなければ、デメリットも代償も存在しない。お前が頷くか、頷かないか。それだけだよ」
「私はね、お前だから、いいの。ただ綺麗なものをこさえたり、大勢に褒められたりするようなのではなく、お前の芸術に興味があるの」

・…………

 

❚❘ 魔女の誘惑


 会話に区切りがつくと、魔女と呼称されるその女性は口角をなめらかに持ち上げた。螺鈿色のしなやかな指をぱちんと動かせば、銀の絹糸が練られる要領で空間が無音のまま引き裂かれ、カーテンのようにひるがえる。


「おいで。お前が芸術の結晶となるさまを、私が面倒してあげる」

 神が7日間で創ったとされる世界は今、7日後に滅びを迎えようとしている。
 ……そう、魔女が言ったのだ。唐突に、淡々と。その言葉が本当なのか嘘なのかを見極める手段は、現状のあなたには、存在しない。
 だから、ここで選ぶ行動は、あなただけのものとなる。
 魔女について無音のカーテンをくぐるか、それとも今いる場所に留まるか。あなたの破滅願望に似つかわしいほの暗い微笑みを、彼女の後姿が湛えていた。

 

 


さて、どうする?


・魔女についていく


・魔女に従わない

 

廃屋の幽霊

 無音のカーテンをくぐり、魔女のあとを追う。まばたきの、ひらめく。刹那、睫毛に鋭い雨脚の気配がたなびき、まばたきと同時に頬へつぶてが滴った。雨が、降っている。
 そっとまぶたを持ち上げれば、眼前に横たわっているのは絵画的な風景だ。
 穴の開いた天井、風にあおられる雨粒が、ひたひたと木製の床を濡らす。ひとつぶずつ丹念に磨かれたそれらが、床の割れ目から無造作にのびる雑草へのびのびと散りばめられている。暗くクリアな緑色を伴いながら流れて、あなたの足元に水たまりと波紋をつくっている。周囲には塗装の剥げたがらくたが放置され、この空間を廃墟みたく演出している。脚のない椅子、盤面の砕けた柱時計、ひしゃげて錆びた燭台。
 その中央に、魔女がいた。
 フィルムを逆巻きにしたような眩暈と倦怠感があなたに漂う。今認識している現状が夢であれ魔法であれ、どちらもそう違いもご都合もないらしい。


【探索者はMPが1まで減少する】

「好きにくつろぐといい。その間にお前が作品になるための準備をするから」

 三角帽子に雨靄を飾った魔女は何かしらの基準をもってがらくたを物色している。尋ねたいことはいくつもあれど、ひとまず言われた通り自分なりにこの場所を調べてみたほうが良いだろう。

​調べられるものは次の3つ。

・窓の向こう側

・がらくたの群れ

・透明な天球儀

 

■探索 - 窓の向こう側


 窓は両側から外気にさらされ、本来の役割をまるで果たしていない。あなたの立っている向こう側にはぼんやりと木々が茂り、あおく枝葉をくすぶらせている。ここがどういった場所なのか、見当もつかない。ただひたすらに薄ら寒く、自分が途方もなく遠い場所まで来てしまったのだという実感だけがそこには横たわっていた。

【目星】または【アイデア】可能

・成功

・失敗

 

○成功


 黒く暗い曇天はぐるぐると中空に横たわり、あなたと魔女の佇むこの廃屋を幽霊じみた雨粒の腕で撫でている。しかし、窓ガラスから覗き込む景色はほのかに明るく、あなたの虹彩へ反射光を添えていた。まるで別の場所との隔たりを、この窓の沈む壁は作っているのだろうか。

まだ調べるものはある?

・がらくたの群れ

・透明な天球儀

​・すべて調べた。

 

○失敗

 黒く暗い曇天はぐるぐると中空に横たわり、あなたと魔女の佇むこの廃屋を幽霊じみた雨粒の腕で撫でている。当分、この雨が止むことはなさそうだ。

まだ調べるものはある?

・がらくたの群れ

・透明な天球儀

​・すべて調べた。

 

■探索 - がらくたの群れ

 がらくたはどれもとうの昔に朽ちた様子で、雨に打たれて鈍い光沢を放っている。

【芸術系技能】可能

・成功

​・失敗

 

○成功

 注意深くがらくたの群れの隙間を縫って歩けば、ふと共通点を見つける。この場所で沈黙に徹しているこれらはどれも、芸術作品であった。それも、未完成なのかばらばらになってしまったのか、どれひとつとして完璧なすがたはなかった。

まだ調べるものはある?

・窓の向こう側

・透明な天球儀

​・すべて調べた。

 

○失敗

 ゆるやかにくつろぐ彼らは沈黙に徹し、どんな経緯でここにいるのかまるでわからなかった。

まだ調べるものはある?

・窓の向こう側

・透明な天球儀

​・すべて調べた。

 

■探索 - 透明な天球儀

 あなたが最初に立っていた場所のすぐ後ろに、透明にかじかむおおきな天球儀があった。人間の背丈をゆうに超えるそのオブジェは静かに軋み、ゆったりと星の在り処を刻んでいる。氷のようにシンと無表情なその姿が、畏怖に似た静謐を湛えていた。

【天文学】または【知識1/2】可能

・成功

​・失敗

 

○成功

 天球儀の表面に刻まれている星図に違和感を覚える。どうやらこの天球儀は、一般的に知られている星座や方位を図るためのものではなさそうだ。

まだ調べるものはある?

・窓の向こう側

・がらくたの群れ

​・すべて調べた。

 

○失敗

 複雑になぞられた天球儀の表面を自力で読み解くには骨が折れそうだ。

まだ調べるものはある?

・窓の向こう側

・がらくたの群れ

​・すべて調べた。

 

❚❘ 魔女とアトリエ

 一通り周囲を見て回ったところで、魔女から声が投げかけられる。

「さあ、準備が整った。今日からはここがお前のアトリエで終の棲家、お前以外の何もかもが揃う場所。お前の望む破滅願望を、存分にお前自身へ振るう7日間の旅路。さて、お前はどのような道具を使って、魂の炉に火をくべるのか。すなわち、お前に必要な道具を揃えるということだ」

 あなたが魔女の言葉に応えるならば、作品を創造するための環境を尋ねられているということなのだから、そのように告げる必要がある。この場所をあなた自身のアトリエにするということだ。
 さて、それでは魔女へ「あなたの活動分野」について伝えなければなるまい。

 

 


 そしてあなたが思い描くそのままに、魔女は頷き腕をもたげる。螺鈿色のしなやかな指をぱちんと動かし、ゆったり大きく空間全体を撫ぜ、巨大な幽霊のクラゲと踊るようにしてドレスの裾をひるがえす。あなたへ微笑む。手がのばされる。一緒に踊れ、ということだろうか。

どうする?(どちらにしても、魔女のすることは同じだ)

・一緒に踊る

​・踊るのは、ちょっと……

 

❚❘ 滅亡へ手向け、魔女とワルツを

 三角帽子の内側からくすりと柔く空気の絞られる、表情。魔女は、確かに笑った。


 そのまま、あなたを取り囲む廃屋にも似た空間もステップを踏み、揺らぎ、ゆうらりうらり、廻りだす。
 真夏のアスファルトに立ちのぼる蜃気楼、湯船に浸かって浴室の電気をなんとなく消した暗がりの磨りガラス、そんな、もの寂しさを抱くような透明性が足元からすべり出る。


 枯れ草の下からイーゼル。ばらりと湧き上がる筆や鉛筆。そのまま帯のようにのたくって万年筆や赤ペン。譜面台と楽器が瓦礫の裏側から整列。定規、布にリボン、工具や天幕。さまざまな芸術活動に必要な道具があなたと魔女とを取り囲んで波打ち、そのなかからあなたに必要なぶんだけが洗われてかたちを得ていく。そうして、魔女があなたをするりと覆って一周する頃には、あなたの魂を砕いて芸術へ燃やすのに必要な環境がすっかり整っていた。

「ほうら、お前を削いで、削いで、砕いて溶かす道具たちだ。魂へ直接触れるお前自身の精神で鍛えた結晶の、どれもがお前だけに扱える一点ものさ」

 魔女の言葉に、あなたの意識がはっとひらめく。螺鈿色のしなやかな指に肌を預けた直後から今まで、まるで底なし沼の泥を被っていたかのような具合でひどくぼんやりとしてしまったのだ。皮膚を撫ぜた魔女の指は、孵りかけのたまごさえ凍りかねないつめたさをしていた。


 ないまぜの浮遊、こごる沈下、あなたの抱えているはずの破滅願望の凪ぐような。それでもあなたの内側に燃えている意識は、魂は、キンと鋭く道具に触れる瞬間を待っている。


【探索者はPOWを0まで喪失する / MPを0点まで喪失する / 正気度を0まで喪失する】
【探索者は今後、破滅願望を永久的に所有する】

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(PL向け情報)
・今後探索者は、1日につき1つのステータスを代償に芸術活動を行なう。ステータスの喪失に伴い探索者には肉体的・精神的な変化が生じる。ただし、シナリオ終了までは魔女の力により問題なく行動することができる。
・探索者は、いつでも芸術活動をやめて日常へ帰還してもよい。魔女がその選択を咎めることはないし、世界も変わりなく滅亡する。
・魔女のもとで芸術活動を継続する場合、「探索」「芸術活動」「就寝」を7日間繰り返す。
・7日間経過後、シナリオはエンディングへ移行する。

[ 基本探索チャート ]
1. 探索 - アトリエを見て回ることができる
2. 芸術活動 - 任意のステータスをひとつ代償に制作活動を行なう
3. 就寝 - 芸術活動を続けるか否か選択できる
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「今現れたそれは、お前自身の精神から削り出した、お前のためだけの道具。魂のいちばん近い場所から取ってきたから、お前自身を穿つのにいっとう良い働きをするだろう」

 明日からその腕を振るうために、一度休むといい。そう言って魔女の指し示した先には、いつの間にか真鍮製の蔦の絡む脚の慎ましく置かれた寝具がある。ゆるやかに波打つブランケットは清潔そうで、目に優しいくすんだ色合いはただ黙ってあなたの休息を願っている。

 

 


これから、世界を創る、その逆巻きの7日間がはじまるのだ。

 

逆創世 - 探索

 さて、芸術活動を行なう前に、このアトリエを見て回ってもよいだろう。1日につきひとつまで、アトリエにある未完成の作品を鑑賞することができる。
 ただし、作品の声がどのようにあなたへ届くのかは、どうやら条件があるようだ……。

​調べられるものは次の6つ。(何から調べたのか、きちんとメモしておこう)

・埃をかぶった誰かの手帳

 

・ひっくり返った水槽

 

・鍵盤のたゆんだピアノ

 

・レンズのない望遠鏡

 

・糸の切れたマリオネット

 

・天球儀の内側

 

■埃をかぶった誰かの手帳

 紙は柔らかくほどけ、今にもインクと一緒にカトラリーで崩して頬張れそうな劣化具合だ。それでも、確かに誰かがここに何かを書き遺し、感情や事象を創作物へと昇華させた。

条件:【INT】【EDU】いずれかが1以上である / または【芸術系技能】に成功する

・条件を満たしている

​・条件を満たせない

 

○条件を満たしている

 そろりそろりと頁をめくり、慎重に流れ落ちる文字を拾っていく。ほとんど理解するには遠ざかりすぎたインクの滲みの、それでも、いくらかあなたへ応える言葉が、そこにあった。


『美しき君。僕は君の名前を知り、君の魔法を知り、そうして僕の言葉を失った。君のおぞましいまでの静謐な在り方は、どうしようもなく僕の言葉を凪いだ泥へと薙ぎ払った。とても芸術へ向き合えるものでは、なかったんだ』
『だから、この不完全な作品はそのままここへ遺そう。美しき魔女イシス、僕はきっと君のことを忘れず、永劫に君と芸術へ挑んだこの短い日々を忘れない。それが、僕の冷え切った芸術への熱に手向けとなる』


 ざあ、ざあ。ふと雨音にあなたの注意がさらわれた刹那、言葉はそっと手帳から逃げ出して足音ごとどこかへ隠れにいった。

鑑賞を終えたら、芸術活動をはじめる時間だ。

 

○条件を満たせない

 そろりそろりと頁をめくるも、もはやあなたはそこに滲む意味ありげなインクののたくるさまへ、どんな意味も見出せない。本能的に思考することだけを許され、あなた自身の言葉だけをあなたへ飼うことを許された、そんなあなたへ、誰かの遺した文字は届かない。
 しかし、それでもあなたへ共鳴するぼんやりとした感傷はあった。その正体も、情動を抱かせる理由も、知性を完全に捨て去ったあなたが言語化させるには至らなかったが。

鑑賞を終えたら、芸術活動をはじめる時間だ。

 

■ひっくり返った水槽

 さかなは一匹もいない。湿った透明な風に泳ぐ枯れ草だけがわずかに揺らぎ、かつてそこがいのちを標本にとどめる展覧会の場であったことを、忘れさせないでいる。

条件:【CON】が1以上である / または【芸術系技能】に成功する 

・条件を満たしている

​・条件を満たせない

 

○条件を満たしている

 深く呼吸があなたのからだというものを吹き抜けて、水槽に吹き溜まる枯れ草たちの駆け足の靴になった。靴紐の枝はさやさやと細かく砕けた瓦礫の砂をならして、うずもれて朽ちかけていたミニチュアの都市を浮かべた。かつて水槽へ荘厳に佇んでいたのであろう都市は、塔や回廊から底のない吐息をこぼす。吐息はあなたを呼ぶ。


『人間の肉体がたとえ百年に満たないうちに失われても、石は数万年だって残る。芸術という名のもとに石を切り出し、積み上げて、造形という脆さを与えたとしても、人間よりは遥かに長く、そこにある。はじめからわかっていたことだ』
『魔女に気づかされたと言うにはあまりにおこがましい。だから、これは己自身の墓標とする。ただ存在するだけでよいのだ。意味も、芸術も、何もなくとも』


 都市は半分ほど粗く削りかけのままで、だから一層枯れ草と懇ろに寝そべっていた。もうその目蓋をもたげることは二度とないのだろう。

鑑賞を終えたら、芸術活動をはじめる時間だ。

 

○条件を満たせない

 枯れ草はわずかに身をよじり煤と砂に濁った水槽のなかをたゆたう。わずかな隙間風の他に彼らの眠りを妨げるものは何もいない。少なくともあなたはそうだった。息をすることを捨て、肉体の活動的なエネルギーを捨て、無機質な存在と果てたあなたが、どうやって墓標の泥濘に息吹をもたらせというのだろう。
 底冷えのする暗黙の寂寥だけが、あなたに見つからない誰かの望郷があることを告げている。

鑑賞を終えたら、芸術活動をはじめる時間だ。

 

■鍵盤のたゆんだピアノ

 鍵盤を支えるピアノの棚板はとうに腐り落ち、弦に吊るされるようにしてくすんだ黒鍵と白鍵が圧倒的な時という重みを奏でている。あまりにぎこちない、曲。

条件:【DEX】が1以上である / または【芸術系技能】に成功する

・条件を満たしている

​・条件を満たせない

 

○条件を満たしている

 かつん、と音のこぼれる。あなたが楽譜を持っていなくても、どれだけ拙い手の伸ばし方であっても、ゆるく軋んだ鍵盤に寄り添う気配の頷く心地がした。
 ピアノに旋律をもたらした誰かの過去が弦へすべり、追憶の音色が琴線へ奏でられる。


『刹那的に流れていく空気の振動を、決してかたちに残らない一瞬間のときめきを、正しく残すことは永劫に不可能だと、そう感じてしまっては、それらを記号に押し込める行為へどうにも熱が入らなくなってしまった。そこに、否定も拒絶もない』
『傑作と雑音の境界はもはや崩れてしまった。君が芸術を芸術たらしめる認識はどこにある?』


 その、声とも音とも振動とも捉えることのできる感覚を、あなたはどう解釈し、あなたの内側へどう留めるのだろう。あなたがどう感じ取ろうと、それに応える者はここにいない。

鑑賞を終えたら、芸術活動をはじめる時間だ。

 

○条件を満たせない

 今もなお降り積もり続ける鍵盤への重力を、あなたは眺めるばかりだ。一体そこにどれほどの旋律が撫ぜられたのか、どれだけの音色が紡がれたのか、知る由はない。たとえそこに触れたとしても、あまりにたどたどしくぎくしゃくと硬いあなたの指が鍵盤を落とさないよう弾くことなど、到底耐えられない。
 低く沈み凍りついた音楽を、身体らしい身体というものを捨てたあなたが奏でることは、許されないように思えた。

鑑賞を終えたら、芸術活動をはじめる時間だ。

 

■レンズのない望遠鏡

 もう何も見渡すことのない机上の、素性の知れない観察眼。何度も修復された痕跡のあるそれは、持ち主のまぶたをどこへ運んでいたのだろう。

条件:【APP】が1以上である / または【芸術系技能】に成功する

・条件を満たしている

​・条件を満たせない

 

○条件を満たしている

 ひゅるりと空洞を視線で撫ぜて、存在しない遠景を覗いた。この廃屋の窓みたく無意味に思えたそこから、くすくすと憧憬の木漏れ日が虹彩を濡らす。


『見える、見えない、みにくい、うつくしい。それを決めるのは私でも、あなたでも、ましてや魔女でもなかった。私のいない場所にいる観衆が、それを決めるのだと、私と魔女しかいないこの場所でものを描こうとしてやっと、気づいた』
『見える、見えない、みにくい、うつくしい。あなたは何を見るの。誰もあなたを見ていないのに』


 そのまま眼差しから濡れ落ちてしたたる透明なつぶては、風にあおられた雨か、誰かの幻影の残滓か、或いは、あなたがまだ涙を流せるのであれば、もしくは。つぶてと一緒に流れてしまったのか、木漏れ日に隠れていた誰かの表情もあなたが掴むことはもうなかった。

鑑賞を終えたら、芸術活動をはじめる時間だ。

 

○条件を満たせない

 がらんどうの円筒に、ざやざやと憧憬めいた誰かの表情の隠れている予感はあった。その予感を確かめる瞬間があなたに訪れることは、永劫にない。容貌や気配というものを捨てて絶対的に孤独な存在となったあなたに振り向く者は、今となっては魔女しかいないのだから。
 誰ともぶつからない眼差しから濡れ落ちてしたたる透明なつぶては、風にあおられた雨か、誰かの幻影の残滓か、或いは、あなたがまだ涙を流せるのであれば、もしくは。

鑑賞を終えたら、芸術活動をはじめる時間だ。

 

■糸の切れたマリオネット

 たとえ持ち上げたとしても、抱きかかえたとしても、人形はばらりと四肢をくつろがせたまま。ある意味安らかな末路にも見える伏せられた睫毛には、感傷の化粧が引かれていた。

条件:【STR】【SIZ】がいずれも1以上である / または【芸術系技能】に成功する

・条件を満たしている

​・条件を満たせない

 

○条件を満たしている

 くらりと錆びついた球体関節が絡み、びっしりと整えられたテグス糸の睫毛がからりとさざなみにうねる。あなたの手足を借りて身をもたげたマリオネットは何者とも捉えられない千変万化の陶器の表情で囁く。それは、あなたの友人、家族、大切な誰か、忘れられないほど憎い相手、はたして誰に似ていると感じるのだろうか。


『あなたは何を演じ、誰にあなたという存在を示すの』
『あの魔女の前で、どうしても私は私の芸術というものを演じきることはできなかった。わからなくなった。だから、私は私の芸術をやめる。あなたの芸術は誰のためのもの?』


 あなたがどのように答えても、マリオネットはトゥシューズで水たまりの鏡に波紋の反射光を描いてくるりと優雅な一礼。そのまま、ぴしりと彫刻のように硬く沈黙し、二度と動くことはなかった。

鑑賞を終えたら、芸術活動をはじめる時間だ。

 

○条件を満たせない

 きいきいと錆びついた球体関節、びっしりと整えられたテグス糸の睫毛、どれひとつとして動くことはない、あなたが動かせることもない。それは得体の知れない郷愁をかためた遺体の彫刻、という形容のよく似合う。
 水たまりの鏡に映るトゥシューズだけが、硬い沈黙であなたとの断絶を物語っている。おおよそ肉体という表現を捨て去り失ったあなたに、それを乗り越える術はなかった。

鑑賞を終えたら、芸術活動をはじめる時間だ。

 

■天球儀の内側

 天球儀が、かちりちかりと音を立てている。透明な容貌は少しずつ細やかなヒビが入り、ゆったりと星の刻まれた在り処を内側から変容させていた。

条件:自意識がある

・条件を満たしている

​・条件を満たせない

 

○条件を満たしている

 天球儀の内側へ意識を踏み込ませる。途端、五感に鋭く染みる痛みに似た何かがあなたの両脇を抱えて、半透明にあなたをこごらせる。全身に流星群が突き刺さり、直後、海のひしゃげた刃の波へと叩き落とされ、この世の暴力すべてがあなたを砕き、ばらばらに引きちぎる。


 ああ、この感覚は、星が滅びる様子そのものなのだろう。きっとこの天球儀が未来の暴力に耐えきれず壊れたその時に、この世界も滅ぶのだ。


 魔女の予言が、根拠もなくあなたのなかで確信へと変貌した、そんな瞬間だった。

鑑賞を終えたら、芸術活動をはじめる時間だ。

 

○条件を満たせない

 それはもはや、あなたはあなたと呼べないかもしれない。天球儀を見ているのは誰だ。あなたは何者か。或いはもはやそこには、何にもないのか。からっぽ。孤独。もはや形而上的にしか存在を許されないのかもしれない。それでも大丈夫だ。あなたが何者でなくとも、世界は滅亡するからね。


 そんな祈りにも似た冒涜を、天球儀は撹拌し続けている。

鑑賞を終えたら、芸術活動をはじめる時間だ。

 

逆創世 - 芸術活動

❚❘ 魔女、芸術、追憶、人間であることへの希釈と破壊


「さあ。お前を削いで、削いで、削ぎ落とそう。お前の魂の炉がお前自身を溶かしていくのを、私が鍛えてかたちにしてあげる。それで、お前はどの人間性から捨てていく?」


 三角帽子の下で魔女の微笑む。しゃらりと雨垂れの装飾をドレスへ流し、螺鈿色のしなやかな指のしたたる。その指に触れれば魂の凍りつきそうに冷たいのをあなたは知っていて、それでもなお、あなた諸共破滅を願って叶えるのに、手を取らなければならないことを、あなたはとっくに理解している。


 さて、毎日ひとつずつ、削いでいこう。あなたはあなたのどこから捨てる?

捨象(一度捨てたら、もう戻らない。何から捨てたのかメモしておこう)

・STR

・CON

・DEX

・APP

・SIZ

・INT

・EDU

 

■ STRを永劫に捨象する

 がり、がり、がり。筋肉も腱も、身体をつなぐ力強さの一切をあなたから削り、作品の要素から不必要だと捨て去る。生ぬるい熱と無縁になった、冷徹な沈黙の澱に守られるあなた。


【探索者はSTRを0まで喪失する】
【探索者は今後、何ものも持ち上げたり動かしたりできなくなる】

​今日の芸術活動はここまで。もうそろそろ眠る時間だ。

 

■ CONを永劫に捨象する

 から、から、から。あなたというあなたから、瑞々しさを取り除いた。乾涸びた四肢はびっしりと硬質な空洞に満ち、あなたをどこへでも連れていけそうなしなやかさへと仕立てるだろう。

【探索者はCONを0まで喪失する / HPを最大値の半分の値喪失する】
【探索者は今後、呼吸という生命活動と無縁な存在となる】

​今日の芸術活動はここまで。もうそろそろ眠る時間だ。

 

■ DEXを永劫に捨象する

 する、する、する。あなたは次第に軋み、凍り、洗練される。それは永遠へ至るための清廉な暴力だ。あなたの引きずる慈しみも優しさも作品として必要ないから、丁寧に取り除いてしまおう。

【探索者はDEXを0まで喪失する】
【探索者は今後、指の一本ですら何かへ触れることがままならない】

​今日の芸術活動はここまで。もうそろそろ眠る時間だ。

 

■ APPを永劫に捨象する

 ほつ、ほつ、ほつ。あなたが他者と関わるのに費やす仮面を、ひとつずつ剥いでいく。次第に軽やかになるあなたは、もうあなた以外の煩わしさを忘れても構わない。

【探索者はAPPを0まで喪失する】
【探索者は今後、何ものにも見向きされない孤独を身にまとう】

​今日の芸術活動はここまで。もうそろそろ眠る時間だ。

 

■ SIZを永劫に捨象する

 さり、さり、さり。薄く、淡く、貝殻の内側のいちばんはかない破片よりも透き通った存在へ、あなたをすり減らしていく。幽霊よりも澄みわたる存在へ、あなたを肉体のしがらみから解放していく。

【探索者はSIZを0まで喪失する / HPを最大値の半分の値喪失する】
【探索者は今後、生理現象の一切から切り離される】

​今日の芸術活動はここまで。もうそろそろ眠る時間だ。

 

■ INTを永劫に捨象する

 ちり、ちり、ちり。跡形もなく燃えていくのは、あなたの芸術と破滅願望を曇らせるその他一切の情動と知性。作品にまとわりつく不純な毒を蒸発させれば、ほら、あなたは綺麗だ。

【探索者はINTを0まで喪失する】
【探索者は今後、自分という存在を正しく理解できない】

​今日の芸術活動はここまで。もうそろそろ眠る時間だ。

 

■ EDUを永劫に捨象する

 ぽと、ぽと、ぽと。今まで培ってきた知識も、畏怖も、敬愛も、すべて滅びてしまうならば、両の指からすっかりこぼして捨てても構わなかった。もう、不安も心配もしなくていい。

【探索者はEDUを0まで喪失する】
【探索者は今後、他人という存在を正しく理解できない】

​今日の芸術活動はここまで。もうそろそろ眠る時間だ。

 

逆創世 - 就寝

❚❘ 今日は何日目?


さて、もうすぐ日付変更線があなたのもとへやってくる。

あなたに明日はまだ残されているのだろうか。

・7日間の芸術活動の続きがまだ残っている

・7日目の芸術活動を終えた(捨てていないステータスがひとつだけ残っている)

 

❚❘ 魔女の言葉

 

 寝具へ身を横たえ眠りにつくまでの間、いくばくかの時間であれば魔女と話ができそうだ。さて、何について尋ね、言葉を交わそうか。もしくは、あまりに疲弊して芸術活動への魂の熱が完全に鎮まりかえりもはや活動を続けられないのであれば、魔女へそう伝えるとよいだろう。

 

・芸術活動を続ける

次の5つの話題について、1日にひとつずつ聞くことができる。(何から聞いたのか、メモしておこう)

・過去

・未来

・魔法

・芸術

・星辰

​・芸術活動を放棄する

 

■話題 - 過去

 

「これまで幾度となくこの星のことを視てきた、そのなかでもお前たち人間は殊に飽きない存在だったよ」


「幾度繁栄と崩壊を繰り返しても、種族の存続を謳う営みに不必要な余剰を生み続け、いつからか『芸術』と確立させてなおそれに挑み続ける者が後を絶たなかった。その先に何を見出そうとしているのかだけは、私ですらずっと視えずにいたよ」


「だから、お前と出逢えたことを私は幸運に思う。お前に何が見えるのか、私に見せておくれ」

​おやすみ、また明日。

 

■話題 - 未来

 

「世界は本当に滅亡するのか、だって?」


「ああ、間違いなく。この星に避けようのない命運がついに訪れる。それだけのことだ」


「私が視たのさ。星の命運を先延ばしにするような存在が現れないところまで。だから、安心して眠るといい。お前がどうあろうとも、この世界は死への行進をやめないからね」

​おやすみ、また明日。

 

■話題 - 魔法

 

「お前をここに連れてきて、そうしてお前を作品にするのに振るっている力。人間に馴染みのある言葉で表現するなら『魔法』で、だから私はお前に『魔女』と名乗った」


「だが、実際に最も『魔法』を使うのが得意なのは、他でもないお前みたいな芸術家だ。一見不可解で辻褄の合わない不条理を、得体の知れない理不尽を、受け入れる寛容こそが『魔法』の正体だ。つまり、お前はお前自身に、世界の滅亡をよそに『魔法』をかけ続けているのさ」

​おやすみ、また明日。

 

■話題 - 芸術

 

「私はこれまで、ついぞ芸術というものを理解できなかった。私自身が芸術からいちばん遠い性質の存在であるが故に理解できないのは無論、芸術家を呼んで活動をさせても魂の炉に私が触れれば熱を奪ってしまって……ただの芸術家では、駄目だったのだ。きっとお前の破滅願望が、お前自身の熱の冷めるのを許さないでいるのだろう」


「ふふ、だからお前とこうして『芸術』というものを間近で見るのは、存外楽しく思うよ」

​おやすみ、また明日。

 

■話題 - 星辰

 

「あの天球儀をお前はもう見た?」


「あれは、この星の最も暗くておぞましい場所からの眺めを刻むものだ。私自身の一部でもあり、いよいよ世界が滅ぶとわかったから具現化させてみたのさ」


「あそこに星辰のすっかり揃う時が、滅亡の合図だ。お前がその瞬間を見ることは、きっとないけれど」

​おやすみ、また明日。

 

永劫を呑む

 あなたは最後まで、芸術と向き合うことをやめなかった。芸術家であり、そして同時に芸術作品と化したあなたは、もうすっかり人間のすがたなんてしていない。あなたが死ぬことよりも手放さなかった魂の熱に磨かれて、あなたは、あなたに、あなたの、あなた自身であることを、永劫に捨て去ったから。

「ああ、やっぱりお前の魂の炉はうつくしいに違いなかった。もう間もなく星辰は揃い、この世界は滅ぶだろう。だからその前に、お前に残った最後の魂のひとかけらを、ちゃんと仕上げてやるからね」

 螺鈿色のしなやかな指から、ひゅるるる、ほつり、糸の舞う。金銀にきらめく糸はなめらかに魔女の指先で踊り、装飾のかたちへと結ばれていく。耳飾りの金具に似ていた。そして、あなたの魂へ巻きつく。

 


 そう、今のあなたのかたちは、魔女の手のひらにたやすく収まる結晶となっている。均整の取れた光沢には、あなたを削いで、削いで、砕いて溶かして、それでもなお残った魂がきらめいて、いまだに消えない熱に揺らいでいる。それだけはきっと、永劫になくならないものなのだろう。

あなたが最後まで手放さなかったものは?

・STR

・CON

・DEX

・APP

・SIZ

・INT

​・EDU

 

■残ったステータスが「STR」である

 

 あなたが最後まで手放さずにいたあなた自身は、身体をつなぐ力強さ。どんな怒りや絶望よりも純粋な感情と願望で鍛えられたあなたは、ペンデュラムの耳飾りとなる魔法を、あなた自身へかけた。

 


あなたは「寛容のペンデュラム」。
いかなる憤怒に対しても、運命を切り開くに堪えうる勇猛な度量があなたにはある。
あなたを身に着ける人間は「戦闘技能」の成功率が10%上昇する。

​魔法遣いのあなたへ。

 

■残ったステータスが「CON」である

 

 あなたが最後まで手放さずにいたあなた自身は、四肢を結わえる瑞々しさ。どんな怒りや絶望よりも純粋な感情と願望で鍛えられたあなたは、ペンデュラムの耳飾りとなる魔法を、あなた自身へかけた。

 

あなたは「忠義のペンデュラム」。
どれだけ傲慢に思える挑戦だろうと、あなたの運命を切り開く眼差しは逸らされない。
あなたを身に着ける人間は「行動技能」の成功率が10%上昇する。

​魔法遣いのあなたへ。

 

■残ったステータスが「DEX」である

 

 あなたが最後まで手放さずにいたあなた自身は、優しくすべるなめらかさ。どんな怒りや絶望よりも純粋な感情と願望で鍛えられたあなたは、ペンデュラムの耳飾りとなる魔法を、あなた自身へかけた。

 

あなたは「分別のペンデュラム」。
あまねく事象へ適切な加減を汲み取るあなたの片鱗は、運命を切り開く鍵だ。
あなたを身に着ける人間は「探索技能」の成功率が10%上昇する。

​魔法遣いのあなたへ。

 

■残ったステータスが「APP」である

 

 あなたが最後まで手放さずにいたあなた自身は、誰かと微笑む美しさ。どんな怒りや絶望よりも純粋な感情と願望で鍛えられたあなたは、ペンデュラムの耳飾りとなる魔法を、あなた自身へかけた。

 

あなたは「純潔のペンデュラム」。
いついかなる時でも、他者へ向けて切り開かれる運命はあなたに導かれる。
あなたを身に着ける人間は「交渉技能」の成功率が10%上昇する。

​魔法遣いのあなたへ。

 

残ったステータスが「SIZ」である

 

 あなたが最後まで手放さずにいたあなた自身は、生命を躍動させるしなやかさ。どんな怒りや絶望よりも純粋な感情と願望で鍛えられたあなたは、ペンデュラムの耳飾りとなる魔法を、あなた自身へかけた。

 

あなたは「節制のペンデュラム」。
その存在に立ち向かう何ものをも、あなたの切り開く運命には抗いがたいだろう。
あなたを身に着ける人間は「対抗ロール」の成功率が10%上昇する。

​魔法遣いのあなたへ。

 

■残ったステータスが「INT」である

 

 あなたが最後まで手放さずにいたあなた自身は、願いと祈りをもたらす聡明さ。どんな怒りや絶望よりも純粋な感情と願望で鍛えられたあなたは、ペンデュラムの耳飾りとなる魔法を、あなた自身へかけた。

 

あなたは「慈愛のペンデュラム」。
あらゆるものへ対等な思慮を宿すあなたであれば、運命をどちらの方向にも切り開ける。
あなたを身に着ける人間は「アイデア」の成功率を10%上昇または下降させられる。

​魔法遣いのあなたへ。

 

■残ったステータスが「EDU」である

 

 あなたが最後まで手放さずにいたあなた自身は、畏怖と敬愛を忘れない謙虚さ。どんな怒りや絶望よりも純粋な感情と願望で鍛えられたあなたは、ペンデュラムの耳飾りとなる魔法を、あなた自身へかけた。

 

あなたは「勤勉のペンデュラム」。
たゆまぬ研鑽を積み重ねて運命を切り開こうとする思考を、あなたならば後押しできる。
あなたを身に着ける人間は「知識技能」の成功率が10%上昇する。

​魔法遣いのあなたへ。

 

❚❘ 魔女の運ぶ音

 

 螺鈿色のしなやかな指があなたをそっと持ち上げても、もうあなたが冷たさを感じることはなかった。あなたのつるりとなめらかな表面へほのかな反射光がまたたいて、あなたが完全に硬質でクリアな美しさに満たされていることを告げている。


 ひゅるるる、ぽつり。雨の鳴る。湿った地球の表面をさらったにおいのぞろぞろと、行列の、あなたのもとまで届く気配のする。
 ここまでの7日間、雨の止むことは一度もなかった。あなたが置き去りにした日常では、もしかしたら未曽有の大雨とかいうニュースが流れているのかもしれない。しかし、そんなこと、あなたにはどうでもいいことだ。

「ふふ、お前を見つけて、私は幸運だったね。この世界が滅ぶ前に、ようやく私にもひとつ、芸術というものを見届けることができた」
「せめてもの礼と餞別に、もしお前が願うならば、お前をここではない別の世界へ送り届けてやらんでもない。つくりあげた作品を誰かへ託したいと感じる意志が、お前にまだ残っているかもしれないからね」
「ただし、私はお前の破滅願望をずっと隣で見ていた。お前はお前だけのものだと言うのであれば、勿論、誰にもお前を投げうったりはしないよ」


「どうする?」

 

 


どうする?


・あなたを「誰か」へ託す


・あなたは誰のものでもない

 

滅亡を臨む

「そう、わかった」
 魔女は頷いて、それ以上にあなたへ言葉も態度も求めなかった。

 

 

 


❚❘ 最期の晩讃


 さて、あなたには残り少ない日常が待っている。
 ひゅるるる、ぽつり。雨の鳴る。湿った地球の表面をさらったにおいのぞろぞろと、行列の、あなたのもとまで届く気配のする。
 あなたは今日も今日とて破滅を願う。
 その行為に意味があるのか、世界がはたして本当に滅亡するのか、あなたに確かめる術はない。しかし、いまだにあなたは、生きている。魔女に頼めば、最後にひとつくらいは、破滅願望の他に叶うものがあるかもしれない。

 

 

 

 

 

 


❚❘ エンド「ペトリコールを待つ者」


 やがて、雨脚は強くあなたの隣を駆けて、日付変更線を引っ張っていく。

 幼いころ住んでいた町を、覚えている?
 大好きだった料理は?
 ないしょの約束は?
 自分だけの宝物は?

 それらすべて、きっとひとつも残りはしない。
 そこにはもう、誰もいないのだ。きっと、魔女も、あなたも。

 純然な冒涜によってもたらされる静謐の予感だけが、あなたを今日も追い立てている。

 


❚❘ クリア報酬 - エンド「ペトリコールを待つ者」


探索者は世界滅亡に伴い死亡する。
このシナリオで発生する世界の滅亡は、絶対的なものだ。

気まぐれな神の手助けも、神話に抗う奇跡も、存在しなかったか星を救うに至らなかったかのどちらかである。

そのため、特別な救済も与えられることはなく、永久ロスト扱いとなる。

そう、魔女が言ったのだ。

​シナリオ背景

 

最も残酷なペトリコール

「そう、わかった」
 魔女は頷いて、それ以上にあなたへ言葉も態度も求めなかった。

 いつしか、アトリエであなたとともに腕を振るった道具はすべて消え失せ、しんと静まり返っていた。7日間をかけて創りあげたあなたの作品だけが、最後にあなたと魔女とを見つめている。
 それがどれだけの傑作であろうと、後世へ残ることも、誰かから賞賛されることも、ないのだろう。そもそも後世というものが絶たれてしまうのだから。だから、ここに残っているのはきっと、あなたの魂の炉に打たれたはがねの鏡であり、あなたの隣人であった。せめてそれだけは、あなただけのものだった、と、囁いた気がするのは、誰だったろう。

 

 

 


❚❘ エンド「ペトリコールを迎える者」


 螺鈿色のしなやかな指の隙間から、止まない雨がざあざあとこぼれていくのが見える。日付変更線のがぶがぶと溺れているのが遠くにわかる。魔女は廃屋の窓をからりと開けた。

 その先に臨む景色は、あなたがすっかり捨て去ってしまったものだ。

 幼いころ住んでいた町を、覚えている?
 大好きだった料理は?
 ないしょの約束は?
 自分だけの宝物は?

 無色透明な天球儀が、軋み、ひび割れ、深い、深い、海鳴りに似た悲鳴をあげる。天には流星群が突き刺さり、地にはひしゃげた刃の波が押し寄せる。この世の暴力すべてがあらゆるものを砕き、呑みこみ、ばらばらに引きちぎるのを、眺めることしかできないのだろう。
 やがて、あなたの視界は暗闇に覆われる。ぞっと泣きたくなるような安堵感が、つめたいあなたの全身を包んで、魔女の語りかけてくる言葉が、魔法遣いだったあなたへ問いかける。

 


「あなたがつかえた魔法は?」

 


 その答えは、誰かの耳元に、あった。

 雨はすべてを洗い流し、奪い、沈め、星辰の揃った宇宙を満たし、……。
 そうして、何もかもを滅亡させたのだ。とあるひとつの、遠くの世界を。
 その結末を伝えるものは、永劫に現れないかもしれないが。

 そんなことはお構いなしに、今日もどこかの世界で雨は上がる。
 何てことのないペトリコールは、瑞々しい生命のきらめきに満ちていた。

 

 


❚❘ クリア報酬 - エンド「ペトリコールを迎える者」


探索者は「ペンデュラムの耳飾り」として芸術作品となる。
作品に探索者の意識や魂が残っているかは自由に決めてよいが、少なくとも探索者として機能することはないため、継続不可扱いとなる。
また、プレイヤーは任意の別の探索者のもとへ、このシナリオを通じて制作した「ペンデュラムの耳飾り」を届けることができる。届ける相手はすぐに決めなくてもよい。
ペンデュラムについては、別のシナリオでアーティファクトとして効果を発揮するかどうか、都度キーパーへ確認をとって取り扱うこと。

そう、魔女が言ったのだ。

​​シナリオ背景

 

最も静謐なペトリコール

「そう、わかった」
 魔女は頷いて、それ以上にあなたへ言葉も態度も求めなかった。

 いつしか、アトリエであなたとともに腕を振るった道具はすべて消え失せ、しんと静まり返っていた。7日間をかけて創りあげたあなたの作品だけが、最後にあなたと魔女とを見つめている。
 それがどれだけの傑作であろうと、後世へ残ることも、誰かから賞賛されることも、ないのだろう。そもそも後世というものが絶たれてしまうのだから。だから、ここに残っているのはきっと、あなたの魂の炉に打たれたはがねの鏡であり、あなたの隣人であった。そこにも、あなただけのものは、確かにあった。

 

 

 


❚❘ エンド「ペトリコールを知らない者」


 螺鈿色のしなやかな指の隙間から、止まない雨がざあざあとこぼれていくのが見える。日付変更線のがぶがぶと溺れているのが遠くにわかる。魔女は廃屋の窓をからりと開けた。

 その先に臨む景色は、あなたがすっかり捨て去ってしまったものだ。

 幼いころ住んでいた町を、覚えている?
 大好きだった料理は?
 ないしょの約束は?
 自分だけの宝物は?

 無色透明な天球儀が、軋み、ひび割れ、深い、深い、海鳴りに似た悲鳴をあげる。天には流星群が突き刺さり、地にはひしゃげた刃の波が押し寄せる。この世の暴力すべてがあらゆるものを砕き、呑みこみ、ばらばらに引きちぎるのを、眺めることしかできないのだろう。
 やがて、あなたの視界は暗闇に覆われる。ぞっと泣きたくなるような安堵感が、つめたいあなたの全身を包んで、魔女の語りかけてくる言葉が、魔法遣いだったあなたへ問いかける。

 


「あなたがつかえた魔法は?」

 


 その答えは、あなただけが知っている。

 雨はすべてを洗い流し、奪い、沈め、やがて星辰の揃った宇宙を満たし、……。
 そこには誰もいない。魔女も、あなたも。

 純然な冒涜によってもたらされた静謐を尋ねるものは、永劫に現れなかった。

 

 

 

 

 

 


❚❘ クリア報酬 - エンド「ペトリコールを知らない者」


探索者は「ペンデュラムの耳飾り」として芸術作品となる。
作品に探索者の意識や魂が残っているかは自由に決めてよいが、少なくとも探索者として機能することはない。制作されたペンデュラムの行方についてもうかがい知れないため、永久ロスト扱いとなる。

そう、魔女が言ったのだ。

​シナリオ背景

 

シナリオ背景

 旧き神であるイシスは、7日後に神話的事象によってひとつの世界が滅びることを予知した。その運命は絶望的であり、彼女だけで取り払うことのできないほど確固たるものだった。
 しかし、偶然か必然か、その日イシスは探索者と邂逅する。探索者の破滅願望と芸術的な才能とに魂の熱と可能性を感じ取ったイシスは、滅亡を前にする世界でひとつの賭けと戯れとに出た。魔術による補助を行ないつつ、探索者に自身の存在を自ら削らせ、探索者を材料にした「芸術作品」というアーティファクトを生み出させようとしたのである。実際に作品が完成するのかどうかも、アーティファクトとしての効果がどのようなものになるのかも定かでない状態のまま。
 そうして、イシスに目をかけられた探索者は彼女のもとで世界滅亡までの7日間を過ごし、己の在りようと向き合うことになる。探索者はアーティファクトとなり世界へ何らかの影響を及ぼすことになるのか、はたまたイシスのもとから去り滅亡までの短い余生を過ごすことになるのか。いずれにしても、探索者が人間として8日目を迎えることはない。

​他、KP向け詳細情報は「ソロプレイ版PDF」に収録されています。

関与する神話生物

・イシス(サプリ「マレウス・モンストロルム」 p.137)

このシナリオでは確実に神話的事象によって世界が滅亡する運命を辿るが、具体的な神性については定めていない。PLが自由に設定してよいし、もし継続探索者で参加した場合は過去の神話的事象と縁のある神性によるものかもしれない。

奥付・注意書き

本シナリオの無断転載および複製、二次配布、インターネット上へのアップロードを禁止します。
シナリオを元にした派生物(リプレイ、小説、イラスト等)はシナリオのネタバレに配慮し、皆様の快いTRPGプレイングにご協力をお願い致します。
本シナリオを使用したことで発生した問題について、作者は一切の責任を負いません。ご了承ください。

この作品はフェリシモ魔法部×二足獣企画TRPGシナリオ一斉投稿企画『きっと魔法遣いだったあなたたちへ』を受けて制作されたものです。作品の内容は実際の企業や団体、商品等とは関係ありません。


[ 制作 ]
七篠K


本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright (C)1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION

よかったらみんなにもこの魔法を教えてあげて。

#きとまほ #えごペト